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4/13/2014

プーチンのガーデニング

 クリミア編入から3週間とちょっと。ロシアによるさらなるウクライナ領の切り取り、それはwhether(起きるか否か)ではなくwhen(いつ)が問題だったわけですが、新生ロシア帝国初代皇帝陛下はこの週末に動いた模様です(guardian記事 BBC記事

  欧米の政策当局者やメディアは大騒ぎですが、プーチン大統領にとってはお庭の手入れをするようなものでしょう。いやわりとマジでそんな感覚だと思います。

 国境付近に軍を集結させて今にも大侵攻との観測を出させながら、謎の武装集団オソロシアを繰り出して各都市の治安当局建物を占拠するというオプションを選んだのは、害虫駆除に戦車は要らぬと言ったところでしょうか。よく統率されている組織化されたオペレーションと表現されていますが、無秩序に銃を乱射する武装勢力よりはなんぼかマシでしょう。

 軍事的、局地的、短期的にウクライナやこれをバックアップする欧米がロシアに対抗する術はありません。クラウゼヴィッツ曰く「戦争とは別の手段による政治の継続」である以上、最終的に政治的に巻き返すことは不可能でないでしょうが、それは何を目的とするかに次第でしょう。
 
 クリミア(海軍基地)に次いで東部(工業地域)の確保に乗り出したわけですが、行けるところまで行くなら、南部のオデッサも掌握したいのが偽らざるところでしょう。先月28日付のForeign Policyの着眼では、オデッサの港からロシアの武器が中東方面に輸出されているようで、仮にオデッサが使えないとすると、武器を運ぶ海運会社Rosoboronexport社が使えるのはカリーニングラードとサンクトペテルブルグとなり、運搬コストが問題になるそうな。

<のーと>


○欧米(West)から見れば侵略なのだが、モスクワは心の底からこれが「奪還」の戦いだと見なしている。根底にある世界観の違いや世界観の形成に影響を与える歴史を理解し、ウクライナ危機を拡大された歴史の文脈に置かなければ、ワシントンや欧州の政策担当者は過ちを犯す虞がある。

○プーチンとクレムリンの仲間たちの世界観はいたってシンプルで至極読みやすい。彼らはリアリストで地政学的思考の持ち主で、勢力圏や緩衝地帯といった、西側が「古い」と見なす考え方を強く保持している。

○これに対してリアリスト的な答えは、「ロシアの勢力圏を尊重せよ」となるだろう。モスクワにとってまぎれもない安全保障上の核心的利益というものがウクライナにあり、それを守るためにロシアが許容できるコストとリスク、得られると考えているリターンは米国や西欧のそれとは比較にならないほど大きい。

○ソ連の栄光を取り戻したい、強いロシアの復活を目指すプーチンにとって、大局的には未だ「不利」な情勢にある。政変以降、ウクライナは彼の手を離れたままだ。「防衛ライン」がウクライナ内、それも東側まで後退したのは戦略的に容認できるものではない。

○「全盛期」はプラハやブタペストで両国の運命を決することができた。それと比較すると、今日のロシアはより自国に近いところでよりリスクの高い行動をしなければならない状況にある。そこに「恐怖」があり「安全保障のジレンマ」があり、状況をさらに悪化させる双方の政策ミスが起きるおそれがある。

○欧米諸国のウクライナに対するアプローチもまた誤った前提の上にある。

○ヤヌコビッチを追い出し暫定政権を作った連中は信頼ならざる「エニグマ」であると見なすべきだ。欧米は誤った側に立つ人間を支援し関与し失敗した経験がある。90年代のロシアにおいてオリガルヒの政権を、00年代のカラー革命に後にやはり腐敗した金権政治家に肩入れした結果がどうであったかを思い起こす必要がある。

○自由と民主主義の旗手を自称する者たちは、ウクライナのリアリティを無視したビジョンの投射をやるべきではない。ウクライナに少なからずいる民主主義者たちを失望させたくなければ、民主主義が根付く土壌をまずは用意するべきだ。

○法の支配の何たるかを知る者が、ソ連で生まれた政治家、オリガルヒ、テクノクラートらがどれだけいるか?  ソ連時代から抑圧の手段であった法執行機関が市民の人権を尊重しつつ治安維持の任務に当たれるか? 
○もしウクライナを自由民主主義陣営に迎えたいと思うなら、これらの領域におけるキャパシティ・ビルディングを行うことが中長期的な成功の条件となるだろう。

 

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